栗駒山 | コウメバチソウ
コウメバチソウはウメバチソウの高山型で、ニシキギ科ウメバチソウ属の多年草。
花茎には茎を抱いたように葉が一枚、2~3cmの花が一輪咲きます。
花弁はたいてい5枚なのですが、この個体は6枚ありました。
コウメバチソウは珍しくないですが、6枚の花弁は珍しいです。
ウメバチソウの語源は家紋のひとつの梅鉢紋から来ていて、菅原道真の紋です。
そう言えば、湯島天神でこの紋を見たことがあります。
この花は、雄蕊の付け根に、花粉の無い、仮雄蕊(かりおしべ)(かりゆうずい)があったり、雄蕊と雌蕊の成熟時期をずらして自家受粉を避けるなど、賢い花です。
栗駒山の美しい紅葉の足元に咲いていました。
ちなみに、ウメバチソウとコウメバチソウの見分け方は、咲いている場所が大きなポイントでもありますが、仮雄蕊の数が違います。
コウメバチソウは、7-11裂であるのに対し、母種であるウメバチソウは、12-22裂と少し多いです。
こちらはウメバチソウです。仮雄蕊が多いのでちょっと賑やかな感じがします。
成熟した雄蕊が1本だけ倒れています。1日に1本づつ成熟していき、昆虫による受粉を待ちます。
アリだったり、小さいハエのような虫がよく止まっています。
北岳|センジュガンピ
センジュガンピは別名シラネガンピ。
ナデシコ科マンテマ属。2cm位の小さな花。
1980年代の図鑑だと、センノウ属になっているが、最近の図鑑だと、マンテマ属になっている。染色体数の研究が進んでの変更の様子。
よく活用させていただいているWikipediaはセンノウ属になっているけれど、染色体数も掲載されている、2014年初版の図鑑を見たので、マンテマ属に間違いない。
ナデシコ科には違いないので、センノウ属でも、マンテマ属でもいいけれど、染色体数が違うらしい。
センジュは、花弁の形が、千手観音の手に見立てたとか、日光の中禅寺湖の湖畔の千手ヶ原に咲いていたから。とか。
ガンピは、中国原産の草木植物で、和紙を作る「雁皮」とは、違い、「岩菲」と言うナデシコ科センノウ属の花と似ているから付けられたそう。
「岩菲」は学名はLychnis coronata。茶華として中国から渡来した花で、フシグロセンノウを小さくしたような花で、確かによく似ている。
でも、センジュガンピはマンテマ属なんですって。
センジュガンピは山地帯から亜高山帯の林の縁に7月〜8月に咲いている。
白い花弁に繊細な切れ込みが入って美しい。
小さくて白い花は、なかなかピントが合わないのは私だけ?
杓子山|キセワタ
キセワタは、シソ科メハジキ属の多年草。
絶滅が危惧されている珍しい植物で、自生は珍しい。
レオヌルス マクランサスと言う学名だが、和名はキセワタ。
属名のLeonurusは、ラテン語で、Leonは、(ライオン)。ouraは、(尾)による合成語で、長い花序の形。を表していて。
macranthusは、macroは、(大きい)。anthusは、(花)の意味。
花冠のフードになっているような形のところの上部白い綿毛が密集しているのが、
重陽の節句に行う風習である、「菊の被せ綿」から来ていると云う。
「菊の被せ綿」については、もうひとつのBLOGに書いてみました。
つぼみも、白い綿毛で覆われていました。
撮影は8月21日でしたので、今頃は満開を過ぎ、種になっていることでしょう。
来年もこの場所で咲いてほしいと思います。
杓子山 | テンニンソウ
テンニンソウはシソ科テンニンソウ属の多年草。
8月中頃(撮影は9月19日)に咲き始めていたので、今は満開から終盤かな。
あちこちで、年々増えているらしい。減っていく花もあれば増えていく花もある。
外来種では無いから、増えたら困るかどうかはわからない。
この花、何となく好きではない。何となく。
鹿達も食べないらしい、鹿はトリカブトも食べないらしい。
鹿は、嗜好がはっきりしている様子、毒はちゃんと察知する。
アサギマダラはお気に召しているようで、栄養供給中。
本当に増えていて、もともと群落を形成して咲く花なのだが、いろいろな山で大群落になって行く。
鹿が食べるのを嫌いな植物=増える
マルバダケブキも、鹿は食べない=増えている
↓
杓子山 | ヒナノキンチャク
ヒナノキンチャクは、マメ目ヒメハギ科ヒメハギ属。
草丈は7~15㎝位で、花は薄い紫色で2㎜の小さい花をつけ、1㎜位の小さい黒い種がきんちゃくのような形をしているさやに入っています。
こんなに小さな道端の花が絶滅に瀕しています。
ここ、杓子山付近は、山焼きが行われいるので、山奥でもないのに、びっくりするように珍しい花に出会えます。
陽あたり良好な所が好きなようなので、道のきわに咲いていて、気がつかないで、踏まれたりしやすそう。心配。
残念な事に、東京都区部では絶滅してしまったそうです。
ヒナノキンチャクという稀少な植物が自生しているのを確認して喜んでいたら、きれいな蝶がいました。
ブルーバタフライでした。 撮影 19.AUG.2019
天然の色ってすごくきれい、空飛ぶ宝石。(飛んでいませんでしたが)
初めて見た気がするので、調べたら、ムラサキシジミのようです。
パープルよりどう見てもブルーだったけど。
花は色々咲いているのに見向きもせずに、羽を広げて、ぼーっとしていて、羽を閉じると割と地味。
ヒナノキンチャクより、注目度が上がってしまいました。
北岳 | シラネヒゴダイ
シラネヒゴダイは、キク科トウヒレン属の花。
稜線付近の、礫地や草地に咲いている。草丈は3cmから高くて20cm位。
強風がお嫌いなご様子で岩に寄り添うように咲いているのを見かける。
トウヒレン(塔飛廉) やら ヒゴダイ(肥後躰) やら植物と言うよりも魚の名前みたい、と、思う。
漢字を見るとそうでもないですが。
この花は、種類が多くて、咲いている場所で名前の検討をつけて図鑑やインターネットで調べたりするのですが、これは、北岳稜線付近なので、シラネヒゴダイに間違い無いです。
このトウヒレン属の名前は、アザミ属でもないし棘もないのに、何とかアザミ。
ヒゴダイ属でもないのに、何とかヒゴダイ。
統一性がないのも、何となく混乱するのです。
でも、ちゃんと名前がわかると、より親しみが湧きます。
北岳 | イブキジャコウソウ
イブキジャコウソウは、ヒャクリコウ(百里香)とも言われる、シソ科イブキジャコウソウ属の低木。木なんですね〜。
低山から高山までみられ、日本原産。
色も形体もかわいいです。
イブキは、滋賀県の伊吹山で最初に発見されたのが由来、ジャコウソウは、日本のタイムと言われるだけあり、良い香りがするからという意味です。
ジャコウって麝香鹿の雄のフェロモンで、いわゆるムスクのことですが、良い香りの喩えなだけで香りは全然似ていないとは思います。
学名の方も、Thymus(タイマス)は、ラテン語のThymeで、香りと言う意味。
ハーブのタイムと同じ仲間なので、このイブキジャコウソウもとてもいい香りがするそうなのですが、高山植物ともなると、恐れ多くて手を触れられないので、香りを嗅いでみたことはまだありません。
ハーブのタイムに似ているのかしら?と想像しています。
タイムと言っても数種類あるんですが。
確かにタイムの花と同じ形ですね。
タイムの花のように、ミネウスユキソウと比べても、小さい花なのがわかります。
今度見かけたら、高山のタイムの香りを確認したいとしたいと思います。
この花も、北岳のトラバース道を彩っていました。
北岳 | ミネウスユキソウ
エーデルワイスは、ヨーロッパでは、もっとも有名な高山植物ではないでしょ
うか。
ミネウスユキソウは、エーデルワイスと同じ仲間で、キク科ウスユキソウ属の花。
日本の固有種です。
高山での分布域は広い方。
学名は、Leontopodium(レオントポディウム)ライオンの足と言う意味だそうです。
北岳では、トラバース道や稜線で8月に見られます。
足もとに咲いているとヘトヘトでも、ちょっとウキウキ。
ミネウスユキソウは、ほかのウスユキソウ属にある、苞葉にある、細かい白い綿毛が少なくて、ふわふわした感じがなくスマート。
それから、北岳のミネウスユキソウは、苞葉、茎葉ともに丸みがあり、柔らかなラインで、ほかの山で見かけるミネウスユキソウと個体差があるような。
ちなみに、下は、至仏山のミネウスユキソウ。
葉っぱが細身。
しかし、このウスユキソウ属は6種と4変種あり同定に迷うんですよね。
山域や標高から分類しています。
ミネウスユキソウは、ウスユキソウが高山に上がったものです。
日本でエーデルワイス(セイヨウウスユキソウ)に近いと言われているのは、岩手県早池峰山に咲くハヤチネウスユキソウと、至仏山と谷川岳に咲くホソバヒナウスユキソウです。至仏山の雪渓周辺に咲いていたホソバヒナウスユキソウは6月に見に行きました。
↓ もっと美人に撮ってあげたかった。
北岳 | タカネナデシコ
タカネナデシコは、ナデシコ科ナデシコ属の花で、別名は、クモイナデシコ。
オノナデシコ。南アルプス国立公園で自然公園指定植物となっています。
県によっては、絶滅危惧Ⅱ類・VUです。
岩場や礫場に咲ている、カワラナデシコの高山型です。
他のナデシコ属の花(セキチクやカーネーションなど)と比べると、花弁の切れ込みが深く裂けていてより繊細な形状ですが、こんな高い山に咲くなんてつわものです。
学名が Dianthus で意味は "dios" ゼウス(神)の "anthos"花です。
スペイン語で dios は神だから、広い意味での「神の花」なのでしょうか?
それとも、あのギリシャ神話に出てくる、ゼウスさまの花ともなると、どのような言はれがあるのかな。
ギリシャ神話にかかわると、面倒なことになるので、さかのぼりません(笑)
子供の頃は、子供向けのギリシャ神話を読んだりしましたが、子供ながらに、
「えっ?」「はぁ?」「あり得ない!」ってなっていましたから。
それは、ともかく、ダイアンサスと呼ばれる園芸種も、きれいなのがでまわっています。
ナデシコは「大和撫子」と言う日本女性の美称があるだけあり、古くから日本で親しまれてきた花で、咲いていると目を引きます。
北岳のおおよそ標高3000m位にあるお花畑です。
ウメバチソウ(向かって左端の白)、イブキジャコウソウ(点在する小さなピンク)、ミネウスユキソウ(写真上の方に点在する白)、タカネコウリンカ(中央下のオレンジ色)がさいています、どれもきれいな高山の植物ですが、一番目を引くのは、タカネナデシコでしょうか。
好きな花のひとつです。
自分はまったく当てはまる気がしないのですが、ナデシコの花が、どのような経緯で日本女性の美称「やまとなでしこ」になったか、自分の納得の行く範囲で調べてみました。
↓
北岳 | キンロバイ
キンロバイは金露梅という漢字があてられ、見た通り、梅の花のような、まるい5枚の花弁を持つ、バラ科キンロバイ属の花です。
2〜2.5cmほどの小さい花をつけます。
古めの図鑑だと、キジムシロ属になっていて、学名もDasiphora fruticosa ではなくて、
Potentilla fruticosa になっていましたが、今は、キンロバイ科になっているようです。
中心部に五芒星。黄色い星があるように見えます。
分布は、南アルプス、谷川岳、至仏、八ヶ岳。四国にもあるそうです。
亜高山帯、高山帯の蛇紋岩地や石灰岩地の礫地に咲いていて、やはり高山植物特有の厳しい自然環境をものともしないで可憐に咲く強さを感じる花です。
葉っぱも小さくて可愛らしいのですが、地表近くは、茎というよりも、枝の質感。
褐色の枝を持つ小低木なのでした。
「キンロバイ」を検索していたら徳島県の最高峰の剣山(1955m)に咲いているキンロバイをモチーフにした、可愛くて美味しそうなお菓子を発見してしまいました。
お菓子の賞を勝ち取っている。
もし、行く事があって、空港に売っていたら買います。
金露梅:【15個入り】徳島の最高峰「剣山」に自生している高山植物の「金露梅(きんろばい)」に ちなんだお菓子です。
- ジャンル: スイーツ > 洋菓子 > 焼き菓子 > リーフパイ
- ショップ: 徳島県物産協会 “あるでよ徳島”
- 価格: 650円
チョコレートコーティングのお菓子は美味しいですよね。
包装が古風な感じもいいかな。
そうなんです。お菓子のモチーフにしたくなるようなかわいい花でした。
北岳 | マルバダケブキ
北岳のダケカンバの森林地帯に咲く、咲きたてマルバダケブキの花。
キク科メタカラコウ属の茎の高さが80~120cmで花頭が8cmと大きな花です。
葉はフキに似ています。
本州と四国(まれに)に分布していて、山地や深山の草地や林の縁に多く見られます。
近年、山梨、長野、静岡、奥多摩でも、シカ密度が上昇中で、高山植物が食害にあっている中、この毒のある、マルバダケブキはのびのびと咲いていました。
シカは食べないのだそうです。
北岳でも、シカの食害から高山植物を守る為に、柵がもうけられていました。
環境省のくくりで、森林管理の為に、シカの管理捕獲等も行われているようです。
森林のお仕事をしている方にニホンオオカミを復活させるのはどうかと、提案したらいい考えだと言われました。
撮影 19.AUG.2019
シカは食べないけれど、アサギマダラはこの花の毒の恩恵を受けています。
撮影 21.AUG.2019
アサギマダラはマルバタケブキの蜜からピロリジンアルカロイドを摂取して体内に蓄えていて、敵からの防衛のためであると共に、オスが放出する性フェロモンの原料ともなっている事が明らかになっているそうです。Wikipediaに書いてありました。
ちなみにこの写真は手前の蝶が彼女で奥が彼です。
この写真は、北岳ではなくて、富士山すそ野の杓子山です。
今日は、シカには見向きもされないけれど、アサギマダラには必要とされて、山の中で増殖している花のことが気になり書いてみました。